SAS – 原因


無呼吸症候群の原因・リスク因子・メカニズムは?

睡眠時無呼吸症候群の98%は閉塞型 (OSA)であり、上気道を閉塞する7つの原因は顎・顔面の構造、肥満症、舌肥大、扁桃腺・アデノイド肥大症、軟口蓋の肥大、鼻づまり、加齢。顎・顔面の構造は日本人では重要です。

正常の睡眠中の呼吸状態:SASのメカニズムを理解するため、まず、正常の人の睡眠中における呼吸の状態を説明します。睡眠中、呼吸のいくつの生理的な調節が行います:脳(大脳・延髄)における呼吸調節は抑制され、呼吸・換気量は生理的に低下します。一方、睡眠は体の休み時間であり、全体的な筋肉の活動と並行に代謝も低下し、酸素の要求も減少するので問題になりません。上気道は軟部組織と骨格より形成され、睡眠中でも周囲の20対以上の筋肉の活動にて開放状態が維持されます。

閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA) では睡眠中に無呼吸の原因は?

SASはほとんど閉塞性であり、上気道の狭窄・閉塞による気流が一時的減少(低呼吸)または停止(無呼吸)するのが主な原因です。睡眠中、上気道の筋肉活動は異常に減少し、気道の開放を維持できなくなる状況につながります。

上気道は構造的に狭い場合、横になって眠ると、周囲の軟部組織(舌・口蓋部)が後ろに落ちてしまって、上気道に圧迫し、閉塞させます。息をしようとしても気流を通らず、呼吸は一時的に減少(低呼吸)または停止(無呼吸)します。血中の酸素濃度(SpO2)がある程度低下・炭素(CO2) 濃度が増加すると、その刺激で覚醒反応が生じ、いびきとともに呼吸は再開します。しかし、再び睡眠が深くなると上気道が閉塞し無呼吸が発生し、この状況は意識せずに1晩中繰り返し、睡眠の分断化、熟睡の欠如にいたります。PSG検査によって、1時間当たりの無呼吸および低呼吸の数値を計算し、5以上の状況はSASと定義されます。この数値は高くなるほど、当然睡眠中に低酸素・高炭素(CO2)血症の状況に陥ります。無呼吸症候群の検査について別のページで説明します。

睡眠中の低酸素症は高血圧、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞、糖尿病の生活習慣病のリスク因子につながります。睡眠の分断化・熟睡の欠如による睡眠障害は 昼間眠気・日中過眠の原因になります。

閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)で上気道閉塞の7つ原因は?

OSAは睡眠時に行う上気道の狭窄・閉塞によって発生します。上気道とは鼻・口から気管まで空気が通る道のことで、骨格と軟部組織よりできています。それぞれに関与する原因が異なりますがここで主な7つを説明します:

1-顎・顔面の構造:
東洋人の無呼吸症候群では重要な原因です。日本人で、顔面骨格がSASの重症度影響する一番重要な因子として報告されています [1,2,3]。上気道の構造はSASの原因として、骨格・軟部によって3つのグループに分けています:

グループ1では骨格の構造で上気道の面積・前後径は十分広いです。肥満になっても上気道は狭窄・閉塞にならず、OSA症状は出ません。
グループ2では骨格の構造で上気道の面積・前後径はぎりぎりな広さです。肥満になると、脂肪組織の沈着にて上気道の軟部組織が増加し、睡眠時に狭窄・閉塞になります。肥満の程度によってSASが悪化します。
グループ3では骨格の構造で上気道の面積・前後径はかなり狭くて、肥満にならなくてもSASが出てしまいます。当然、体重が増えると、その程度SASも悪化します。

2-肥満度:肥満の程度のみならず、内臓脂肪の程度、脂肪組織は沈着する部位によって無呼吸症候群の原因として重大な役割があります。国内の研究によるとSAS患者の60-70%には肥満症があります。また、顎・顔面の構造によって、日本人は欧米人と比べて軽度・中等度の肥満もSASの原因になります[4, 5]。

3-舌のサイズ(面積・容積):OSAの原因に関して、上気道の狭窄・閉塞の発生が1番多い部位は中咽頭(口を大きく開けた時、口の奥に見える部分)です。この部位では舌の後半分(舌根部)と扁桃腺があります。大人の睡眠時無呼吸症候群の原因として、特に仰向けで寝ている時、筋弛緩により舌が下がり、気道を塞ぎます [6, 7]。

4-扁桃腺の肥大症・アデノイド肥大症:特に子供の睡眠時無呼吸症候群では1番の原因です。扁桃腺肥大は上気道の中咽頭の部分、アデノイド肥大は上咽頭の部分を狭窄します。大人のOSA原因としては少ないです[8]。

5-軟口蓋のサイズ:上気道の狭窄・閉塞の発生が2番目に多い部位は上咽頭であり、扁桃腺と共に、軟口蓋の肥大もこの部位の狭窄に関与し、睡眠時無呼吸症候群の原因になります[9]。

6-鼻づまり:さまざまの原因にて鼻づまりが出ます:アレルギー性鼻炎、花粉症、鼻中隔彎曲症、肥厚性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻茸。鼻づまりによって口呼吸が優先になり、顎が後方に移動し、咽頭レベルの起動は狭くなります。その結果、いびき・無呼吸症候群の程度が悪化します。また、鼻づまりはCPAP治療の断続性を下げる大きな原因でもあります[10]。

7-年齢:加齢に伴ってSASが増加します。高齢者に発生するSASの病状は若年・中年期とは異なります。高齢者のSASメカニズム・原因として、上気道を開大する筋肉の力の低下、咽頭レベルの脂肪組織の増加、夜間に起こる体液のシフト(体液が足から頭部へ移動すること)することがあげられます。また、高齢により顎の関節が緩くなり、顎が後退することも睡眠時無呼吸症候群の原因につながります。顎がうしろに引っ込む事で、舌が下顎の中に収まりきらなくなり、気道をふさぎます [11, 12]

その他のリスクファクターとして、甲状腺機能低下症、先端巨大症などがあります。また、過度の飲酒、就寝前のカフェイン・コーヒー、喫煙は閉塞性睡眠時無呼吸を悪化させます[13, 14, 15]。

参考文献:

[1] Ishiguro K et al: Relationship between severity of sleep disordered breathing and craniofacial morphology in Japanese male patients. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2009; 107: 343-349.

[2] Saigusa H et al: Three-dimensional morphological analyses of positional dependence in patients with obstructive sleep apnea syndrome. Anesthesiology. 2009; 110:885-890.

[3] 日本人におけるSAS患者の肥満と重症度の関連性についてThe association between obesity and disease severity in the Japanese sleep apnea syndrome (SAS) patient. 千里金蘭大学紀要. 生活科学部・人間社会学部 5, 1-14, 2008-12-09

[4] Young T et al: Excess weight and sleep-disordered breathing. J Appl Physiol (1985). 2005;99(4):1592-9.

[5] 榊原博樹: 日本人の疫学. OSAの診断と治療. 日本内科学会雑誌 93(6), 1069-1076, 2004.

[6] Nashi N et al: Lingual fat at autopsy. Laryngoscope. 2007; 117(8):1467-73.

[7] Kim AM et al: Tongue fat and its relationship to obstructive sleep apnea. Sleep. 2014; 37(10): 1639-48.  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4173920/

[8] 小児睡眠時無呼吸症候群Obstructive Sleep Apnea Syndrome in Children. 小児耳鼻咽喉科 26(1), 82-87, 2005. 日本小児耳鼻咽喉科学会.

[9] Friberg D: Abnormal afferent nerve endings in the soft palatal mucosa of sleep apnoics and habitual snorers. Regul Pept. 1997 Jul 23;71(1):29-36.

[10] Nakata S. et al: Effects of nasal surgery on sleep quality in obstructive sleep apnea syndrome with nasal obstruction. Am J Rhinol. 2008 Jan-Feb;22(1):59-63.

[11] Bixler EO et al: Effects of age on sleep apnea in men: I. Prevalence and severity.  Am J Respir Crit Care Med. 1998 Jan;157(1):144-8. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9445292

[12] Chung S et al: Effects of age on the clinical features of men with obstructive sleep apnea syndrome. Respiration. 2009;78(1):23-9. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19420898

[13] Zhang M et al: Role of hypothyroidism in obstructive sleep apnea: a meta-analysis. Curr Med Res Opin. 2016 Jun;32(6):1059-64. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26907534

[14] Krishnan V et al: Where there is smoke…there is sleep apnea: exploring the relationship between smoking and sleep apnea. Chest. 2014;146(6):1673-80. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25451354

[15] Punjabi NM: The epidemiology of adult obstructive sleep apnea. Proc Am Thorac Soc. 2008;5(2):136-43. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18250205
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2645248/